ネット事件簿



事件簿No001 オークションで出くわした、とんでもない奴の記録

工房長(2005.08.28)(2005.09.03)(2005.09.10)
第1章 はじまりは突然に...
    いつもの通りビッダーズでコレクションしているスケルトンモデムの腕時計を物色中であった.
    手頃なのを見つけたので、早速ウォッチリストに登録、いつもの手法に従い、完了間際に入札を行い、無事落札...これが、その商品.

    1円スタートであったため、えらく安くで落とせたのであるが、この時点で少し不安になる...他2点も同じ相手から、これもまたえらく安く落とせてしまった.
    さて、早速いつもの様に取引ナビで連絡をしておかねば...
第2章 疑惑のはじまり
    取引ナビで画面を開いてみたところの表示、出品者情報であるが...

    さて、変な表記だらけである、ちょっと注意.
      メールアドレスがフリーメールかい!
      名前はとんでもなくありきたり、良く考えてみたらこれ、イチローの本名ではないか!
      住所は県名が2つも有るぞ、どっちが正解なのか?郵便番号からすると、神奈川県だなこれは.
    う...む、さて、どうするか?とりあえず住所を確認せねば...MapFunで調べてみたのがこれ.

    げ!お寺だよ!これは怪しい、詐欺くさいなあ...このまま取引ナビで連絡してしまうと、こちらの情報が全部行ってしまうので危ない.
    最小限の情報だけでDMしてみて反応を確かめてみる事にした.
第3章 いんたーみっしょん
    メールの反応があるまではちょっと一段落、2、3調べてみるか...
    まずは、商品の画面にあったメーカーのサイト、見てみると...

    至ってシンプル、これ以外何も情報が無い、どこかに隠しリンクがあるのかとも思い、ソースを表示してみてもそれらしいものは無い.
    これは変だよね、メーカサイトなら会社概要とか製品一覧、スペックなんかが出ているのが当たり前、これはでっち上げのメーカでは無いのかな?
    さて、そうなって来ると、このメーカ:Obris Morganてどういうのか、いろいろ検索してみるがWEB、関連記事でのヒットが無い.
    Whoisでobrismorgan.comを見てみたのがこれ...

    コンタクト先がまたフリーメール、真っ当なメーカならここはxxxx@obrismorgan.comだろうが...
    これは明らかに変、と、思い出したら、妙に興味がわいてしまった.
    他出来る事は無いかな?...そうだ、商品である、どっかで見たことがあるデザインである、早速探してみると...

    そう!これ、ミッシェル・ジョルダンのとそっくり!、もしかして、パチもんか?
第4章 沈黙
    さて、いくら待ってもメールの返答は来ない、再送してみても同じ.
    これは、はなから取引するつもりが無いな、と思って、出品者の評価ページを見てみると...

    私が入札する時は、まだ新規出品者で評価0であったのが、もう滅茶苦茶、評価に-9が付くとは前代未聞、それ以降、新しい出品も無いところをみるとこれ、逃げたな.
    これで追跡はおしまいか?と思ったが、後日、新たな展開を見せる事になるのである.
第5章 新たな舞台へ
    舞台は変わり今度はYahooオークション、こちらはビッダーズに比べて経験が浅いのであるが、出品数も多くて種類も多い、しかし入札も多いので落札には苦労するのである.
    こちらでも定期的に物色をしているのであるが、見つけた!

    ビッダーズに出ていたものと同じものである、しかも記事レイアウトがそっくり、定価の表記ミスもそのままである、これは間違いなく同一出品者である、早速落札してみる.
第6章 動く!
    落札すると出品者の情報が見れる様になるのである.

    よし!、メールアドレスがビッダーズの時と同じである、もうこれで同一出品者であることは間違いない、どう動くか?
    とりあえず連絡が来るらしいので、待ってみる事にしたら、すぐやって来た.

    なんか変なメール、文になっていないし、改行もしない文章羅列である.
    差出人の署名にJustinとある...これはobrismorgan.comの情報にあるJustinと同一か?...となると、obrismorgan.comの関係者が出品者?
    いやいやそれは考えにくい、メーカが自社製品をこの様な方法で、しかもビッダーズの様に問題ありとなる取引など行う事はあり得ない.
    ここでも疑問はあるが、オークションのルールに従い、落札者はその責務を果たさねばならない、入金し、メールを送った.

    すぐさま返事が来る、相手も確認はしている様である.

    これで自分の義務は果たした訳である、さて、どう出るか?
第7章 ちぐはぐな行動
    待つこと5日、どうも彼の周辺は時間の流れが遅いらしいが、取引評価で私の欄に書き込みがあった.

    出品者が落札者の評価を入れるパターンはだいたい2つ.
    一つは、落札者が商品の到着、評価後、出品者への評価入力を確認して、その返事で行うケース、この場合出品者は、入金確認、発送案内などこまめにメールをくれるのである.
    もう一つは、入金を確認し、発送した時点で評価入力するケース、これは、出品者のアクションが完了した事を評価で教えてくれるので、状況案内のメールは来ないのが一般的.
    今回の後者のケースであると考えられる、到着を待つ事にしたが、翌日、いきなりこれ.

    なんか妙な雰囲気、とりあえず先に送ったメールを添付し、再度メールを送る.
第8章 コンタクトリトライ
    ここで、お盆休みを迎えるので一旦お休み、休み明けに持ち越しである.
    商品の到着は無い、さて、どうなったか、対策をどうするかである.
    先ず、出品を見てみる...出品は続いている様である、たとえばこれ.

    これもどこかで見たデザイン、そう!ロベルタ・スカルパのこれである.

    どうもパチもんみたいであるが、一応Q&Aでたずねてみると、反応があった.

    メールはともかく、オークションのページではそれなりに反応が見込めそうである.
第9章 アタック
    出品者の評価ページを見てみると、だんだん悪い評価が目立って来る...傾向としてそういう評価をした所には何らかのアクションが有る様に見られたので、早速入れてみた.

    すると、メール到着.

    何これ!どうも彼はかなりルーズな様であるが、こちらはまじめに対応、再度メールを送る.
    この後、反応を見るため何度か評価を変更してみるが、特にアクションは得られなかった.
第10章 撤退
    そろそろ1ヶ月が過ぎようよしている.
    このところ、出品は無い、それに加えて評価がだんだん悪くなる.

    どうやらこれ、ビッダーズに引き続き、逃げたみたいである、さて、どうしようか?
第11章 海の外でのこと
    Yahooでの出品者の評価を見てみるとうまく取引出来た人もいるみたいで、その書き込みからみると、
      (1)海外から発送されるらしい(香港のようである)
      (2)商品の到着が非常に遅い
      (3)防水に関するクレームが多い
    等、分かる.
    そうか!香港である、パチもんと言えば昔から香港、早速香港Yahooオークションで検索してみた.

    あるわあるわやはりここが本場である、しかも商品にはno rolexとか断り書き...これってはなからパチもんと断って売っているのか?
    ここでの出品者はobris morganである、つまり、名前から素直に判断すると制作元であり、そうなると、Justinが絡んでいる可能性があり、ビッダーズやYahooの件とも関係するかもしれない.
    中国語は良く分からないが、翻訳サイトで翻訳しながら評価を見てみると、悪い評価は無いものの普通と評価されたものの比率が高く、遅い、連絡とれない、商品のクレーム等似た様な反応がある.
    商品紹介で使われている画像、画像に説明文が挿入されているものがある、たとえばこれ.

    他は中国語なのに何でわざわざここだけ日本語?と言う感はあるが、これは見覚えがある、super bomb storeでも同じ出品があり、そのときの画像と同じである.
    データを流用した様である、同一人が関与しているらしいことは間違いないみたいである.
第12章 正体は謎の外国人?
    いくつか事実からの類推.
      (1)Justinは中国語圏内の人間、もしくは香港と関わりがある外国人ではないか?
        (a)中国語を主言語としている
          メールでの挨拶は「こんにちは」ではじまっている.
          これは「ニーハオ(フォントが無いのでカタカナ表記)」を翻訳しようとするとこうなる.
          日本や英語圏では時間帯で挨拶が異なり、使い分けるのが通常であるが、中国語はスパムメールでもそうであるが書き出しは「ニーハオ」である.
          この事から中国語を主言語としていると類推出来る.(HKYahooがメインならそれもそうである)
        (b)日本語は出来ない
          メールの文章は短い文の寄せ集めである.
          翻訳ソフトや翻訳サイトで中国語へ翻訳しようとすると、短い文でしか意味の通る文が出来ない.
          逆もまた然りである、おそらく中国語を翻訳して日本語にし、メールしてきている様である、ならば、メール文のおかしさは納得できる.
          また、言い回しや長い文章では翻訳が不完全になり、こちらの言いたい事が伝わっていない事も考えられる.
      (2)国内に協力者がいるかもしれない?
        (a)銀行口座
          入金で指定された「新生銀行 本店 0964772 モリシマノリカズ」であるが、口座を開設するなら本人確認は必須である.
          この人物は誰か?まあ、不正取得は出来ない事もないし、口座自体は不正使用目的で売買もされているのでそれらを利用したのかもしれないが...
        (b)時には立派な日本語を使う
          メールでは変な日本語であるが、説明ページや評価などではちゃんとした文章を使っている.
          落札後の最初のメールも、本来ならテンプレートから必要箇所へ記事を埋め込み送るべきをうっかりテンプレートのみ送ってしまった様にも見受けられる.
          元記事を書いた人間が別にいる様である.
    つまり香港で地道にやっていればいいものを調子こいて日本に進出しようとしたが、商売に対するルーズさが災いして失敗、逃げ帰ったのが事実かもしれない.
第13章 真のはじまり
    この件は、ここでどうも終わりになりそうであるが、まだ解決していない事がある.
    「新生銀行 本店 0964772 モリシマノリカズ」である、これがどういうものか、はっきりさせなければならない.
    こっちは入金しているのである、ただ逃げられたでは済まされないのである.
    引き続き追跡する事にする.
    また、Justinが性懲りもなく、再来するかもしれない、多分、ほとぼりが冷めたころに...
    まだまだ続くのである、続きはまた後日、新しい事実とともに...
終章 遅れて来た結末
    そうこうしているうち、突然荷物が届く...いきなりやって来た!

    外観はこの通り、上面のラベルはこちらからのメールで通知した住所をそのままプリントアウトしたものを貼り付けてある.
    梱包はまずまずである、シールから中国からの航空便である事が分かる.

    さて、消印であるが、見てみると...

    香港、8/31である、すぐ送ると最終連絡があった8/18よりほぼ2週間、これが彼のすぐなのか、もしくは、この地域のビジネスはこれがスタンダードなのか?
    発送から1週間で到着は、まあ、AIR MAILなら仕方ないか、でもかなりの放置時間があったのは確か.
    もしかしたらまとめて処理する日を決めてあったりして、その辺は断っておいた方が良いと思うが...
    まあ、とりあえず、商品は手元に来た、開梱、検品する...

    ぬあー!いきなり品物が違う!一番右のやつ!あーもう!もう面倒である、クレーム付けても対応があるかどうかも分からないし、このままにする!
    さて、箱は何と!紙製、環境に優しいのかどうだか、何となくそれだけで安っぽい、おまけに保証書や説明書、ギャランティーカードその他一切無し、なんだこりゃ?
    左のから動かしてみると、日付窓の送りが途中で引っかかる.
    他のも何となく造りが変、これはやはりパチもん系である、まあ、香港である、まじめに商売している人には申し訳ないが、そういうものがあふれている場所でもあるから仕方ないか.
    これなら、そこらで売っている一個¥1,000の時計の方がましである、これはお蔵入り、コレクションに値しない.
エピローグ
    やれやれ、とんだ結末を迎えてしまった.
    詐欺ではなかったが、粗悪品をつかまされるパターンである、この辺、フォローがしっかり出来ない出品者の品には手を出さない様にすべきが今回の教訓か?
    この種の品は、とりあえず日本の業者が出品しているのを落札する様にしよう.